経営者インタービュー詳細
VOL.105
- 投稿日:2023.5.24
- 編集日:2023.5.24
“正解の導き出し方”これが分かって全てが変わった
株式会社吉村電機工業所
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代表取締役吉村 恒介
家業に入ったのは、私の兄が会社を継ぐことが決まったからなんです。変な風に聞こえるかもしれませんが、そんな話が出た当時、私は大学生で、「働く」ということにどうも前向きになれなくて、休学して一年北海道に行ったり、帰ってきてはまた休学してオーストラリアに一年行く。そんなことをしていたので大学卒業までに6年半かかりました。私が大学を卒業する時期は、兄は他社で修業中だったのですが、私は兄とは違い他で修業することはせずにそのまま家業に入りました。そして、家業に入って1年程経った頃結婚もして、公私ともに順風満帆。そんな時のことでした。兄が倒れたんです。命にこそ別状はなかったのですが、体に左半身麻痺が残ってしまったんです。この出来事によって、私が会社を継ぐことになったんです。
兄が会社を継ぐから、一緒に居れば一生安泰。楽観的と言うか、そんな風に思って、家業に入った訳ですから、その兄がいないとなると気持ちがついていきませんでした。そんな気持ちがふわふわした状態で仕事をしていたので、現場の職人さんたちともどんどん溝が出来ていきました。そんな時にあるクライアントから「制御盤を作ってくれないか?」という依頼を頂いたんです。過去に、簡単な制御盤の設計ならやっていたので引き受けたのですが、父も誰も詳しい人がいなかったので自分が一人でやるしかなかったんです。頼みの綱は、制御盤を構成する部品の各メーカーの担当者さんでした。何をどう聞いていいのかも分からない。そんな状態からのスタートだったので当初は担当者の皆さんにもご迷惑をかけたことと思います。そんな中で何とか制御盤を完成させた時に、現在でも大切にしている非常に大切なことに気付いたんです。それは、「自分はどこまで分かっていて、どこから分かっていないのか?」ということを明確に線引きするという事でした。それに気付いてから、聞き方が分かり、正解の導き出し方が分かったんです。それが分かってから、他の電気工事の事もどんどん理解していき、弊社の電気工事の全てを理解したように思います。そして、今から10年前、先代の父の年齢的なこともあり引退することになったので私が代表を継ぎました。
社是でも掲げている「希望・愚直・感謝」。これを大切にしています。代表取締役としての私の立場に当てはめると、ただ愚直に仕事に取り組むだけでは、人はついてこないと考えています。愚直にやることは当然の事として、私の周りの皆さんに希望を見せて、感謝の気持ちをしっかり言葉で表現して伝えることが大事だと考えています。
人材の採用と育成に力を入れています。中でも、現在は育成に力を入れています、というのも、図面を見ながら作業が出来る人は多いのですが、その元になる図面を書ける人が少ないんです。ですから、図面を書ける人の育成に今は一番時間を使っています。
先程も少しお話しました、制御盤の事業をスタートさせて手探りの状態が続いた3~4年の間が精神的につらかったですね。制御盤を作って納品しても、その通りに機械が動かなかったらどうしよう・・・。納品してもそんな不安が付きまとう状態が続いた時期が本当につらかったです。
何でも人に聞いて指示や答えを求めるのではなくて、何でも自分で考えて欲しいということはよく話しています。そして、各個人が考え抜いて導き出した答えを、私も含めスタッフ同士が尊重し合える組織にしていきたいと考えています。また、私は、社員にこの会社で働きたいと思ってもらえる地域ナンバーワンの企業を目指しています。
先程もお話したことにも通じるのですが、「10年後、社員にこの会社で働きたいと思ってもらえる地域ナンバーワンの企業になる。」ということが明確なので、これがそのままモチベーションに繋がっています。10年後、この目標を達成して社員の皆と一緒に笑っていたいと考えています。
私の目標とは別に、この建築業界が慢性的に抱える問題として、「働き先としての人気の無さ」があるんです。3Kなんて言われ方もするんですが、これを変えたいと考えています。その為に、週休2日制を完全導入したり、サービス残業を無くしたりと言うことを積極的に会社でやっていこうと考えています。しかしながら、ただ休みと残業代を増やすと会社の経営に支障が出る可能性があるので、そいうことをしても業績を上げ続けられるように、弊社の強みである制御盤の設計と制作をもっとブラッシュアップし、引き受ける仕事の基準を上げていく努力をしていこうと考えています。そして、地域社会のみならず、建築業界に対しても何か貢献できればと考えています。