経営者インタービュー詳細
VOL.151
- 投稿日:2023.5.25
- 編集日:2023.5.25
より良い未来から選ばれる農業
佐原農園株式会社
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代表取締役佐原 範靖
家業も農家なのですが、家業を継いだ訳ではないんですよ。「どういうこと?」と思われると思うので順番にお話しします。私は、農家の次男の生まれなんです。私の生まれた地域は昔の考え方や習慣が色濃く残る地域で、「跡取りは長男。」そんな考え方一般的でした。ですから、家業については長男である兄が継ぐもんだと思っていたので私は、学校を出てから農業とは畑違いの清掃の仕事に就きました。その仕事に就いて数年した頃からは、会社を通さずにお客様から直接仕事が入るようになってきたので、「独立してこれで稼ごう!」と考え出した矢先、兄が親と仕事以外の事で仲違いを起こしてしまって家を出て行ったんです。当時は、私も家を出ていましたから、親からすると長男も次男も家を出ていて、家に居るのは高校生の妹だけだったのですが妹に後継ぎになるならないの話になることも無く、それから数年後継ぎ問題が解決しないまま時間が流れました。
それから、この一帯の地域が台風被害に遭ったんです。農作物も被害を受けたのですが、そんな時に父が膝のけがをしてしまったんです。そのタイミングで「戻ってこないか?」と言われたのですが断ったんです。しかし、しばらくしてからまた「戻ってこないか?」と言われて、「育ててもらったしなぁ…。」なんていう思いから家業を手伝うことを決意したんです。これが今から10年程前の事です。以前の清掃の仕事も農業も身体を使うという意味では似ているところがあるのですが、なんと手取りが半分になったんです。「身体を使う仕事でしんどいのになんでやねん!絶対何か問題があるぞ!」と思ったんです。その当時の父は根性論を前面に押し出していたのですが、それにも違和感を感じていました。根性論を掲げる父は数字なんて見ないので、数字を代わりに見ていた母に連れられ税理士さんや銀行の担当の方と話す機会が多かったのですが、皆さん口をそろえて「このままではマズイですよ。後継者はどうされるんですか?」と言うんです。この辺りで、前から薄々感じていた親族経営の限界を痛感して、当時色々相談に乗っていただいていたある会社の監査役をされていた方に相談したら、「あなたが一念発起しないと何も変わらない。」と言われて、親族経営から脱却すべく家業を継ぐのではなく別で個人事業を始めたんです。そして、2015年10月に法人化して現在にいたるのですが、今でも家業とは作業を受託するという形で関わりはあるものの実態は完全に別のままなんです。
経営者になったからとかそういう事ではなく、もっと昔から思っているのは、相手の事を大切に思う事、そして尊重すること。つまりそれは愛だと思うんですよ。この「愛」というものは大切にしています。また、私自身の自己管理の方法として昔から実践しているのは、何かを決めるときはまずは未来を決めて、なりたい自分を想像するんです。そして、その将来の理想の自分が今の自分を見た時にどんなアドバイスをするのかということをイメージして今の行動を起こすようにしています。
やはり昨年から続く新型コロナウイルスの影響ですね。弊社はBtoBのモデルがメインでしたから、緊急事態宣言等で取引先の間口が一気に狭まったんです。これはマズイということでBtoCのビジネスを一気に展開して間口が広がったのですが、単価が下がったんです。この時期は資金的にもきつかったです。しかし、今となっては従来のBtoBの展開だけではなく、BtoCの展開も取り入れることが出来たので良かったと感じています。
求められている品質と供給量を切らさないということが信頼につながると考えています。私たちが扱っているモノは「相場物」なんです。市場に出回る量が少なければ高くなりますし、多くなれば安くなります。弊社はある程度の規模でやっていますので、ある程度お客様の期待には応えることが出来ていると感じています。そうは言っても相場の影響を受けますが、世間が1,000円/キロでも、お客様と500円/キロで約束していたらそれで入れます。商売として考えた場合には市場に流した方が良いのかもしれませんが、お客様の立場に立って考え行動し判断をしていれば、お客様もお客様にとって多少条件が悪い場合でも弊社から買っていただけます。やはり相手の事を思うことは大事ですね。愛だと思います。これが弊社の貢献です。
第一次産業である農業生産という側面から日本の「食」を支えていきたいと考えています。昨今、フードロスという問題をよく耳にしますが、これは第二次産業以降で発生している問題なんです。だからといって、第一次産業に問題がないのかと言うと問題が山積みなんですね。その問題を一つでも多く解決するために、まずは弊社としてしっかりとした生産基盤の構築を行わないといけないと考えています。その為に、現在弊社のある地域の近隣のみならず少し足を延ばした他府県の後継問題を抱える農家さんの土地を借りて生産基盤を増やしていこう計画しています。そうすれば、現在の弊社のある場所のみならず、その他の地域もよりよい未来に導くことが出来ると確信しています。そして、長期的には「55歳までに年商20億円の会社にする。」この目標を達成したいですね。