経営者インタービュー詳細
VOL.120
- 投稿日:2023.5.24
- 編集日:2023.5.25
❝SDGs❞平安時代から取り組んでますよ
株式会社岩田宝来屋
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代表取締役社長岩田 宏隆
実は、私の実家はお寺なんですね。高校時代に僧籍と言って、僧として所属している宗派に籍を登録しました。それから、29歳までは実家で僧侶をしていました。勿論今も現役ですよ。それから、結婚のタイミングで家内の実家であるこちらに入社することにしました。実家のお寺の後継ぎは兄がいましたし、何より私自身が決められたレールを歩くような人生に違和感を持っていて、何か別のことをしたいと昔から思っていたので丁度良かったと言えば丁度良かったんです。僧侶と言えども、仏具や仏壇の仕事は初めてな訳ですから、入社してからはいちから勉強しました。そして、今から5年前、先代の逝去をきっかけに3代目として代表取締役に就任しました。
私自身が決められたレールの上を歩くことに違和感があるというか好きじゃないように、何事も細かく決めたマニュアルというものもあまり好きじゃないんです。経営理念や経営の指針をしっかり定めて、全員で向かうべき目標は一つにして、そこに向かう向かい方は個々に任せています。皆一人一人の個性を大切にしていきたい。そんな風に考えています。
まず、社員の皆とは短期、中期、長期のビジョンや目標をしっかり設定して共有するようにしています。また、職人の方々については少し話がそれるかもしれませんが、彼らの持つ仏壇、仏具の技法をインテリアに応用して海外の愛好家に発信しています。これは、長期のビジョンや目標を見越してのことなんです。今、職人の世界は後継者の課題をずっと抱えています。なり手として手を上げる若い世代が少ないとい言うこともありますし、ずっと食べて行ける業界か分からないという思いから職人さん自身が積極的に後継者を作ろうとしません。しかし、職人の技術をインテリアに応用し海外で評価を受ければ、国内でも自ずと評価は集まるでしょうから商売としても成立するはずです。そうなれば、職人の業界が慢性的に抱えている後継者の問題も解決されると考えています。
社員の皆がどうやったらうまく動けるのか?動いてくれるのか?ということを考えていることが多いですね。私は、社内で社長の売上がトップというのはまずいと考えています。私が、いなくてもしっかりと回る会社にしたいと考えています。その為に、社員の皆の動きを考えています。社長として最終判断をしないといけない場面はありますが、そんな時も私の一存で決めてしまうのではなく、「自分はこう思うがどうしたらいい?」と社員の皆に聞くようにしています。
私どもは、携わる仏壇や仏具を100年も200年も持たせる気持ちで作っています。また、100年後でも200年後でも、修理が出来るように全く釘をしようしないほぞ組みなどの技術を用いて作っています。また、私たちが作るものは信仰の仏具なので、それ自体が目を引くものは作れません。あくまでも、中心の阿弥陀様に目を向けられるようにしないといけません。その為、修理をするにしても修理したところが分かるような修理はご法度です。どこを修理したのか分からないようにすることが私たちの仕事であり1,200年受け継がれた技術です。その技術を用いて、数百年前の仏壇仏具を直す。今で言うSDGsのような取り組みに私たちは遥か昔から取り組んでいるように思います。
働き方改革なんていう言葉が出てきて何年も経ちますが、今世の中で言われている働き方改革っていうのは、ひょっとしたら「働かせ方改革」なんじゃないか?と感じることがあるんですよ。私は、働き方改革は社員の皆、個人個人が工夫して考えればいいんじゃないかと思うんですよ。極論、朝一番で大きな仕事が決まったのならその日は家に帰って家族と過ごせばいいと思ってます。短時間で最大の効果が出るような働き方を個々に考えてもらいたいですね。そして、入社したら定年までいたくなるような会社にしていきたいです。今後については、世間で称賛されるようなものを作りたいと考えています。例えば、冒頭でもお話したインテリアです。仏壇仏具はマスコミに評価されるものではありませんが、インテリアはグッドデザイン賞という賞があるようにマスコミの評価対象となっています。賞賛されるようなインテリアをリリースすることで、「これは誰が創った?」「これはどこが創った?」となれば、世間の脚光を浴びることが出来ます。私どもは今まで、世間の脚光を浴びることが少ない業界でしたが、これからは一つのものを創ったらそれに関わった全ての人に対して、陰日向なく光が当たるようになれば本当に嬉しく思います。