経営者インタービュー詳細
VOL.130
- 投稿日:2023.5.24
- 編集日:2023.5.25
こだわりばっかりじゃなくて求められていることが出来るのならやるべきだと思うんです
日々菓子
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オーナー吉田 幸恵
ケーキ屋さんをやりたいとか、自分のお店を経営したいというようなことは特にありませんでした。私は、経営とかそういう事ではなくて、ケーキを作るということ自体が好きで興味があったんです。ケーキやお菓子作りに興味を持つようになったのは高校2年の頃からでした。製菓の専門学校を卒業してからは、ケーキ屋さんとかカフェで働いていたんです。仕事自体は好きだったのですが、飲食店ってハードワークなところがあって30歳の頃に気持ちとは裏腹に体調をひどく崩してしまったんです。そして、その時に「この働き方で、あと何年も働き続けることが出来るのかな?」ってメチャクチャ不安になったんです。それで、独立して自分の店をやることを決意しました。
確かにそうなんです。「40歳で独立するから、それまでに〇〇万円貯めるぞ!」みたいなことは一切やってなかったんです。ですから、単純に資金の問題がありました。商工会議所にも起業の相談に行きましたが、そこでも資金不足は指摘されました。それに輪を掛けて、物件に拘ったもんですから、中々お店を出す場所も決まりませんでした。起業すると決めてから、実際にお店を出すまでに約2年かかりました。その2年間で、ケーキ屋さんにアルバイトに行ってケーキ作りの勉強をしたり、あえて大きなケーキ工場にアルバイトに行って、ケーキ作りの大規模な生産ラインを経験したりしました。
とにかく、食品衛生法に抵触しないようなお菓子作りだけの独立したキッチンが欲しかったんですね。そんなキッチンがあって、営業を始めるに当たっての改装コストが安くて、尚且つ人が来やすい場所。そして、賃料が安い。そんなワガママが叶う物件が祇園のこの物件だったんです。
一般的には、ケーキ屋さんやお菓子屋さんを出店するとなると、「ケーキ屋は絶対路面に面していないといけない。」とか、「使うオーブンは絶対このメーカーのこれじゃないといけない。」とか、そういう暗黙の「絶対」があるんです。でも、私は全然気にしていません。絶対こうしなければならないとか、「絶対」は無いと思っています。「ケーキ屋さんやお菓子屋さんは、絶対にお客様にお店に来て頂くものだ。」と思い込んで、こだわっていたら今でもお店は出来ていなかったと思います。また、私自身が私自身を絶対的な職人じゃないと思っているので、一般的な職人さんだとやらないような事でも出来る限り柔軟に対応するようにしています。職人ですけど、流れに逆らい続けたり、こだわりを持つことにこだわりす過ぎるのではなくて、求められていることが自分に出来ることなんであればやるべきなんじゃないかなと考えています。
ピンチとかじゃないかもしれませんが、起業当初、資金が十分に無かったときは起業した時普通やりそうなことが出来ないことがありました。例えば、お店のホームページやロゴを作ったりというような事です。ていうか、そもそもお客様を呼べるような改装をする資金が無かった時点で、そんなことをする資金なんてあるはず無いんですけどね。でも、あれこれ出来るような資金が無かったから、出来ることが限られてそこにフォーカスすることが出来たので良かったんじゃないかとも思います。材料や素材にこだわったりなんてことが純粋に出来ました。
今は、卸がメインなんです。卸先はカフェといった飲食店が中心です。そういったお店に私が作ったお菓子を並べると、お菓子だけを買いに来てくださる方がいらっしゃるようで、客層の幅が広がったとカフェや飲食店の経営者の皆様には喜んで頂いています。また、その他にも依頼を受けてレシピの提供や商品開発も行っています。
カフェや飲食店への卸とインスタグラムでの販売が機能したので、影響が無いとは言いませんが、致命的なダメージは受けずに済んだように感じています。今は、焼き菓子を中心にやっていますので、日持ちがするので地方発送が比較的簡単に出来るんです。
現在は、卸にしてもレシピ提供にしても商品開発にしても、お客様のオーダーやご要望を聞いてそれを再現するということが何より重要です。お客様に対しては、出来ないことややるべきじゃないことをプロとしてお話することはありますが、私がやりたいことや、私ならこうやるなということは当然ですが抑えています。だからと言う訳ではありませんが、単純に「自分の作りたいものを作って、それをここでお客様に販売したい。」と思っています。また、インスタグラムを使って販売をしていますが、自分の販売サイトを作ってインターネットを活用した販売も始められたらなと考えています。