経営者インタービュー詳細
VOL.2
- 投稿日:2023.5.23
- 編集日:2023.6.06
”答えを教える”のではなく”答えに気づける” そんな声掛けが大切です
出張さんばステーション聖護院海助産所
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代表宮川友美
助産師と言うのは、赤ちゃんが生まれることをお手伝いするだけでなく、産前産後のみならず各年代においての性の悩みであったり、女性のライフステージ全般においてサポート出来るパートナーのような存在なんです。でも、一般的には、病院の中で妊婦さんや赤ちゃんの色々なお世話をしているイメージが強いと思います。
病院に勤めて助産師をしていると、組織として大勢の妊婦さんと関わるので、どうしてもそれぞれの妊婦さんとは、「点」でしか接することが無いんです。一方、開業助産師は、一人の妊婦さんと多くの時間を過ごすので「点」ではなく「線」で接することになるんです。そういう接し方をすることで、女性が本来自分自身が持っている力を発揮しやすくなると思うんです。ですから、大げさかもしれませんが、開業助産師こそが本来の助産師のあるべき姿なんじゃないかなぁと思っていました。それから、私自身の妊娠と出産を開業助産師さんにサポートしてもらうという経験もしました。そして、私自身の妊娠に伴う産休や育休をしていた間に、「出産という命がけでする経験をして残りの人生は本当に自分のやりたいことをやろう!」と、思い切って2013年に独立しました。
産休や育休中に色々出かけてママ友と話をしていると、「仕事なにしてんの?」なんていう話になる訳ですが、その時に「助産師をしてる。」と言うと、本当に色々な質問や相談を受けるんです。そんなことを経験したときに、「これ、気軽に聞ける場所がホンマに必要なんちゃう?」と感じたんです。そのうちに、ママ友から「場所を用意するから、ママ友集めて話してくれへん?」とか依頼を受けるようになったんです。具体的にこういう依頼を受けるようになったので、「このまま独立してもやっていけるんじゃないか?私がそういう場所を作ろう!」と思って、独立の後押しにもなりました。
私のところへお越しになられる方は出産後の方が多いんです。そんな皆様の相談に耳を傾けていると、ここに自分の「悩みの答え」を求めていらっしゃる方が結構多いんです。でも、妊娠や出産に確かな答えがある訳じゃないんです。相談に来られる方が、それまでにやって来られたことや、これからしようとされていることに間違っていることはありませんので、ここに来られた方に対して私が出来ることは、どうしてそれをしようと思ったのか?ということを聞いていって、思いや考えを共有して、ご自身で「あ!私でいいんや!私のやり方でいいんや!」と気付いてもらうことなんです。このように、皆様には自分自身で気付いて頂けるような声掛けをするように心掛けています。
嘱託医の問題に直面した時です。私達、開業助産師は嘱託医か嘱託医療機関と契約をしないとお産のお手伝いが出来ないんです。開業してから、私も病院と嘱託医療機関の契約をしていたのですが、その契約が切れてしまったんです。契約が切れてしまったことで、お産を引き受けることが出来なくなって、収入がなくなってしまいました。この時が本当に辛かったです。「また、勤務の助産師に戻ろうか…。」ということも考えました。しかし、「宮川さんのところでお産がしたい。」と、仰ってくださる皆様がいらっしゃったので、断られても断られても病院を訪ねて契約をしてくれる嘱託医療機関を探していました。そういう活動を始めて約7か月程経った頃、ようやく契約をしてくださる嘱託医療機関が見つかり窮地を脱することが出来ました。
この場所を、ここに来られた人が、「来てよかった!」「また、来たい!」と、そんな風に思い感じてもらえるような場所にしたいと考えています。そう思ったり感じる人と言うのはサービスを受ける側だけではなく、この場所を利用してサービスを提供する側の人にも、そんな風に思ってもらいたいです。何と言うか、実家に帰ったときの何とも言えないほっこりする感覚をここでも味わってもらって、ここを出たときにエネルギーチャージ出来て、「来てよかった!」「また、来たい!」と思ってもらいたいんです。そんな思いを大切にここを運営しています。
私達のような開業助産師が増えればいいなと思っています。その為に、一つ目は、私達助産師だけではなく、ママさんやパパさんも巻き込んで行政に皆様が助産師を頼りやすいような制度の改正を働きかけていきます。二つ目に考えているのが、後輩の育成です。私達助産師がいるのは女性を守るためです。これが本来守るべき根底にある考え方なのですが、どうしても病院に勤務しだすと日々の業務に追われてしまってそれが見えにくくなってしまいます。ですから、ここに勤務を始める前の助産師を目指している学生を招いて、悩みを持って訪れてきたお母さんが、ただ助産師と話しただけで、元気になって帰っていった。そんなお母さんの姿を見てもらいたいと考えています。