経営者インタービュー詳細
VOL.44
- 投稿日:2023.5.23
- 編集日:2023.5.25
お茶というツールを用いて心和む場所を提供したい
有限会社六角ちきりや茶舗
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代表取締役若林 大督
今でこそ、創業以来私で4代目そして111年目を迎えますが、実は先代である私の父は自分の代で終わらせる気だったようなんです。ですから、一回も家業に入れとか入って欲しいとか言われたことがなかったんです。そんな状況だったもんですから、大学時代は普通に就職活動をして興味のあった住宅の仕事をするために住宅系の会社で営業職に就きました。しかしながら、常に心のどこかでは家業とは切っても切れないという思いはありました。それから、同じ住宅業界で一度転職はしましたが、結婚と子供ができるタイミングが重なった2016年、これを節目として家業に入りました。そして、2018年に4代目として代表取締役に就任しました。
私どもの仕事は小売業です。ですから当然、モノを売っている訳ですが、私はモノを売ってはいけないと考えています。お見えになられたお客様と会話を通して、そのお客様にどう寄り添えるのかが大切だと考えています。ですから、私どもはお客様がお見えになられても、「いらっしゃいませ。」というお声掛けはしません。「こんにちは。」とか「おかえり。」とお声掛けするようにしています。近所のお茶屋さんのおっちゃんとおばちゃんではなく、近所のおっちゃんとおばちゃんがお茶屋さんをやってる。そんな風に感じて頂くことで、お茶屋さんに対する敷居を少しでも下げることが出来ればと思っています。
お客様の居心地が良くなるように、楽しめるように、お客様に心和む場所を提供して欲しいと常日頃話しています。また、ただお茶を買って帰ってもらうだけではなくて、何か思い出も持って帰ってもらいたいと考えています。でも、そう言うのって口で言われても分かりづらく理解しづらいと思うので、私が実際にお客様と接している姿を見せることで伝えられればと思っています。そういうことを通じて、私を含めスタッフ全員の人間的、人格的成長を意識して日々皆とコミュニケーションを取るようにしていて、ゆくゆくは私がいなくても私の思いを持ってお客様と接してもらえるようになってもらいたいと考えています。
売上の側面で見ると、やはり昨年からのコロナ禍の打撃は大きいです。売上も半分程度まで落ち込みました。原因は、各地の百貨店の催事等のイベントが無くなったからなんです。このままではいけないということで、昨年の9月から京滋エリアを中心に密着して多店舗展開をされている大型スーパーに出店するようになりました。これによって、お客様に対して遠方に出歩くことが難しい緊急事態宣言中であっても、一つの楽しみのようなものをご提供できたように思います。実際、宣言解除の合間に京都以外の地域からお店にお越しくださるお客様がいらっしゃたり、ホームページや電話でご注文を頂いたりしています。こんなコロナ禍でも、待っているのではなく、こちらの方から出向いていくと新たな発見があるということを気付けたのは弊社にとって大きいで発見となりました。
気兼ねない話の生まれる元になるお茶。そんなお茶を体験して頂く機会を増やすために敷居を下げることが弊社なりの貢献だと考えています。冒頭でもお話しました、近所のおっちゃんとおばちゃん。そんな風に思ってもらうことで敷居を下げるなんていうこともその一環です。そして、スマホを一旦横に置いて、お茶を通して人との関りやご自身の心にゆとりをもって頂ければなんて思っています。
昨年から続くコロナ禍で明るくないニュースが多いことは事実ですが、私自身、精神的には、そこまで大きなダメージは受けていません。それには2つの理由があって、一つ目は経営方針の存在です。これを作っていて本当に良かったと思います。経営方針があったおかげで、私がやるべきことが全くぶれずに済みました。そして、二つ目が10年後のビジョンが明確にあったことです。10年後のビジョンと経営方針が相まって私のモチベーションの源になっています。
10年後、「郊外地で私設の道の駅を作って地産地消の拠点を作ろう!」と考えているんです。それを達成するためには、やはり売り上げを上げないといけないので、今よりもスタッフを増やさないといけないと考えています。そして、スタッフを増やし「お茶の販売事業」、「全国催事事業」、「スーパーへの卸売り事業」、「不動産関連事業」大きくこの4つのカテゴリーで事業展開を行い、これらが噛み合った先に「道の駅」があると考えています。そして、地域に根差した楽しい会社があることを皆様に知ってい頂けたらいいなと思っています。