経営者インタービュー詳細
VOL.87
- 投稿日:2023.5.24
- 編集日:2023.5.25
一日の決断回数“約35,000回”その全てが”キレイ”で“美しい”そうありたい
豊竹工芸株式会社
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代表取締役白波瀬 初美
弊社は、先代である私の父が創業したんです。創業当時は、外国船籍の船の貴賓室の内装家具を製造していたのですが、時代の流れと共に市場が縮小して業績が思わしくなくなっていったんです。それから、船舶の内装家具以外に陸上の色々な場所で使われる注文家具や造作家具を作るようになっていったんです。そんな会社はと言うと、創業者である父を社長として親族を中心に経営されていました。しかし、父との考え方等のすれ違いによって、父以外の親族が次第に抜けていき、気が付けば親族が事務員の私だけになっていました。そんな時のことです。父が脳内出血で倒れてしまい左半身に麻痺が残ってしまったんです。話したりすることに何ら問題はないのですが、しっかり自由に体が動かせないのでどうしようかとなったときに、私の方から父に「私が後を引き継ぎます。」と伝えたんです。そして、私が代表取締役になり父が会長になりました。これが、2008年のことでした。
私が代表取締役に就任して翌年の事です。当時の弊社の対外的な営業活動を一手に引き受けてくれていた営業部長が急逝されたんです。これによって、お客様と弊社とを繋ぐ窓口が突如無くなってしまいました。「豊竹も、もうアカンな・・・。」そんなことが業界内で囁かれ出すのにもそんなに時間は掛かりませんでした。この時期が本当に辛かったです。この時は、創業以来の船舶の造作家具のお仕事を年間2件程度させて頂きなんとか食いつないでいました。そして、大きく会社が上向きに転じるキッカケになったのは、設計部長の息子さんの入社でした。入社された息子さんが図面を書くようになり、設計部長が対外的な営業活動をやってくれるようになったんです。これで何とかピンチを脱しました。
まず大切にしているのは、お客様との打ち合わせにしても、制作にしても、「見えないところまで気を配る。」ということです。また、私は女性なので女性ならではとでも言いますか、そういう気配りや心配りをするようにしています。例えば、お手洗いの使い方です。私が現場に行き、お手洗いに行ってみるととても汚れている状況を目にすることがあります。当然、汚れれば掃除をするわけですが、その掃除をするのは私でも、現場で作業する職人さんでもありません。お客様なんです。ですから、私は現場で作業する職人の皆さんには、トイレを汚さないように、また汚してしまった場合はキレイにするようにお願いしています。これによって、お客様からは一定の評価を頂いているように感じております。
5年程前から月1回ミーティングを開いています。その中で、私の思いや考え方を話して伝えるようにしています。そのミーティングの中では、職人の皆さんにも発言をしてもらいたいのですが中々職人さんの方から発言が出ることが無かったんです。これを変えるために、2年程前から職人さんに個人の目標設定と結果発表をしてもらうということを始めました。また、これと同時にスタッフ間での気付きも発表し合って共有しています。これによって、職人間でのコミュニケーションが活発になり、結果的に業務効率の向上と改善に繋がっています
「運命事象」。私の周りで起こる全ての事は私が招いていますし、全て自分だと考えています。また、「自分を愛さないと人を愛することは出来ない。」「人にした恩は忘れろ。人にされた恩は忘れるな。」と、そんな思いを大切にしています。
一番よく考えているのは、「私自身が笑顔になれているかな?」ということです。人は、一日に約35,000回も決断をする訳ですが、私は常に「キレイな方」や「美しい方」を選択して決断するようにしています。常にそういう決断が出来ていれば私は自然に笑顔になれているでしょうし、その瞬間毎にする私の選択が私の望む選択になっていたのか、なっているのかを計る一つのバロメーターとして自分自身の笑顔にフォーカスしているんです。そして、一日終わりには、一日を振り返るようにしています。
何よりまずは、会社の魅力や企業価値を上げることを考えています。その第一歩として、現在の作業場を対外的な発信の出来る場所としての機能を兼ね備えた作業場に改装しようと計画しています。今のところ「ショールーム」というのが近いイメージかもしれません。そこで、豊竹工芸の考える価値の提案や、私達の技術を発信していくことで、「豊竹じゃないと出来ない。」「豊竹じゃないと無理。」と、皆様にそんな風に思って頂けるような魅力的で企業価値の高い会社を作り上げていこうと考えています。